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齋藤優介 齋藤優介
2021.05.16
鏡面

株式会社 今井技巧

磨くという技術の先にあるものとは

「#240000で研磨をお願いします」
初めて依頼を聞いた時は耳を疑った。間違いではないですか。と聞き返すほどだったと、株式会社今井技巧 代表取締役 今井大輔(4代目)は当時を振り返った。

創業は大正15年。初代は美術工芸の飾りを彫る彫金師として東京で活躍し、腕の良い技術者ということで、燕に招かれ、地場の金型製造に携わった。現会長今井道雄(3代目)が、さらにその金型を研磨する技術へと移行していった。

様々な用途の金型を研磨するが、特筆すべきがプラスチック製品を作る際の金型研磨技術。この金型への研磨の良し悪しが、製品の価値にダイレクトに響いてくる。もちろん研磨の精度が高くなるほど、鏡面技術はより輝きを増し、重要な部品になることは明白だ。今井技巧はその分野にかけてはスペシャリストである。

#240000。研磨業界では、ありえない番手の注文が出された。普通研磨を行う際には#3000より数値が大きくなると鏡面仕上げといわれる。#14000で業界ではトップクラスの細やかさで鏡面を作り上げる。

それが、金型研磨には定評がある今井技巧が培ってきた技術だ。
それだけに#240000という研磨への挑戦は、未知の領域でもあった。
しかし、挑戦しがいのある依頼でもあったという。

今井は、研磨業界では他に類を見ないクリーンシステム『KOACH』を導入することで作業環境を向上させた。試行錯誤を重ねた結果、前人未到の#240000の研磨に応えた。

実際の作業現場を訪れると、そこには技術者の静かな息遣いと、研磨され究極の鏡面となった金型から反射する光が壁に映り込み鋭くきらめいていた。
その光景は、まさに今井技巧が創業から90年に渡って培ってきた技術の集大成の1つであろう。
究極の鏡面を作り上げた先に、求めたお客様の笑顔が映り込むものであって欲しいと今井は心に誓うのであった。

株式会社今井技巧→https://www.imaigikou.co.jp

※写真は#14000の鏡面仕上げイメージです