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2026.07.17 update

FACTARIUM参加企業の技術が、 唐招提寺講堂の荘厳具を未来へつなぐ。

FACTARIUM参加企業の技術が、
唐招提寺講堂の荘厳具を未来へつなぐ。

国宝・唐招提寺金堂。奈良時代に建立された唐招提寺を象徴する建築。

奈良県奈良市の律宗総本山・唐招提寺。その講堂に伝わる華鬘、鈴、分銅、ガラス玉の修理・復元に、燕の町工場が携わりました。

今回参加したのは、株式会社つばめいとが運営するFACTARIUMの参画企業4社と、中村硝子工作所です。洗浄、3Dスキャン、立体モデル・金型の製作、銅板の成形、溶接、表面処理、金めっき、ガラス加工まで、それぞれの企業が日頃培ってきた専門技術を持ち寄り、一社だけでは完結できない修理・復元を実現しました。

唐招提寺では、講堂本尊である国指定重要文化財「弥勒如来坐像」の、記録上約110年ぶりとなる修理が行われ、2026年4月15日に開眼法要が営まれました。弥勒如来坐像は、1287年(弘安10年)に造立が発願され、1292年(正応5年)に開眼供養が営まれた鎌倉時代の木造像です。像高は約2.8メートルで、1915年から1916年にかけて修理された記録が残されています。

今回の本尊修理は、2023年度から2025年度までの3年間にわたり、公益財団法人美術院によって行われました。これとは別の取り組みとして、講堂内を荘厳する華鬘、鈴、分銅、ガラス玉についても修理・復元が進められ、株式会社つばめいとが全体の調整を担いました。

修理・復元を終え、唐招提寺講堂に再び掲げられた華鬘。

華鬘は、仏堂の内部を美しく飾り、仏を供養するために奉納される寺院荘厳具です。今回修理した唐招提寺講堂の華鬘には、寛永年間をはじめとする江戸時代の年紀や、奉納者の名を記した銘文が残されています。そこには、寺を支えてきた僧侶や寄進者の祈りと、時代を越えて講堂を守り続けてきた人々の営みが刻まれています。

今回、華鬘15面に金めっきを施しました。また、欠損していた鈴12個、分銅13個を純銅で復元し、現存する鈴14個、分銅26個についても修理と再めっきを行いました。

復元では、現存品を3Dスキャンし、形状把握のためのデータを作成しました。そのデータをもとに立体モデルと絞り加工用の金型を製作し、銅板の成形、組み立て、溶接、仕上げ、金めっきへと工程をつないでいます。

ただし、3Dスキャンした形をそのまま再現すれば完成するわけではありません。現存品には一点ごとに個体差があり、長い年月の中で生じた形状の違いや、華鬘への取り付け方にも差があります。そのため、現物を確認しながら、一点ずつ調整して仕上げました。

有限会社本間産業は、既存部材の洗浄を担当しました。金属表面に付着した汚れや油分を除去し、後工程となる修理や表面処理に適した状態へ整えています。

株式会社新武は、現存する鈴と分銅の3Dスキャン、立体モデルの製作、絞り加工用金型の製作、銅板の成形を担当しました。図面のない現存品を計測し、製作可能な形へ落とし込む工程に、日頃の金型製造や金属加工で培った技術を応用しました。

ゴトウ熔接株式会社は、成形された鈴と分銅の組み立て、仮止め、TIG溶接を担当しました。熱によって変形しやすい銅製部品に対し、部材への影響を抑えながら精密な接合を行っています。

スワオメッキ有限会社は、華鬘、鈴、分銅の修理、表面処理、金めっきを担当しました。現存品の修理に加え、新たに製作した鈴と分銅にも金めっきと表面保護処理を施しました。

欠損していたガラス玉は、中村硝子工作所が復元製作しました。現存品の形状や色調、華鬘全体との調和を確認しながら、白色、透明、橙色の3種類を製作しました。製作を担当した中村和宏氏は、ガラス工芸を専門とし、長岡造形大学教授も務めています。

修理前の華鬘。長い年月の中で金めっきが摩耗し、鈴や分銅の欠損も見られました。
修理・復元を終え、唐招提寺講堂に再び掲げられた華鬘。

株式会社新武の代表取締役・齋藤智則氏は、今回の取り組みについて次のように振り返ります。

「復元することの難しさを感じました。図面があるわけではなく、一つひとつに個性があります。3Dスキャンした形をそのまま作ればよいのではなく、現物に合わせて調整しながら形にしていく必要がありました。一方で、歴史を感じながら取り組む作業は、本当に面白いの一言でした。また、このような仕事に挑戦させていただけたらと思います」

唐招提寺の石田太一宗務長は、「その時代ごとに歴代の人々がお堂を荘厳し、寄進者や関係者の力を得ながら寺を護ってきました。その積み重ねの軌跡が、今回修理した華鬘にも表れていると思います。今回、燕の皆様の技術によって荘厳具が再び輝きを取り戻しました。ここに込められた思いとともに、100年、200年先へと受け継がれていくことを願っています」と語ります。

石田太一 宗務長

 

燕には、金型、板金、溶接、研磨、洗浄、表面処理など、企業間取引を支える高度な加工技術が集積しています。しかし、こうした技術の多くは、取引先の製品やブランドの内側で活用されているため、企業名や技術力が一般に知られる機会は限られています。

今回の取り組みは、そうした表に出にくい燕の技術をつなぎ、歴史ある寺院荘厳具を守り、未来へ伝えるために生かしたものです。

本事業は2024年、関係者から唐招提寺を紹介いただいたことを契機に始まりました。燕の町工場が持つ加工技術を、寺院荘厳具の修理・復元に生かすことができないかと提案し、現物調査、工程設計、参加企業の選定、試作、製作へと進みました。

株式会社つばめいとは、唐招提寺との調整、現物調査、参加企業の選定と企業間連携、荘厳具の運搬、取り外し、取り付けまで、事業全体の進行を担いました。

寺社仏閣が所蔵する荘厳具や仏具の中には、修理を必要としながら、対応できる技術者や事業者を見つけることが難しいものもあります。今回の取り組みは、燕の町工場が持つ技術が、製品製造にとどまらず、文化を守り、未来へ伝えるためにも生かせることを示しました。

株式会社つばめいととFACTARIUMは、今後も寺社仏閣や関係者と連携し、対象物の状態や課題に応じて燕の加工技術をつなぎ、文化継承の新たな可能性を提案していきます。