エステーリンク 株式会社
人を守り、環境を守るものづくり
代表取締役 齋藤隆範 氏 インタビュー
危険作業から人を解放するエステーリンクの描く未来
エステーリンクの開発の原点は、人を危険から守ることにあった。金属加工の現場では、バリ取り作業が日常的に行われてきた。しかし、この作業はグラインダーを用いるので、粉塵や火花を伴うだけでなく、一歩間違えば命の危険に晒されることもある。熟練の技術を持つ者でさえ、常にリスクと隣り合わせの作業であった。
そこで同社が開発したのが、自動バリ取り機「メタルエステ」である。人の手を機械が代替することで、安全性を飛躍的に高めただけでなく、省人化と品質安定を同時に実現した。危険な作業から人を解放するこの装置は、同業者から大きな支持を受け、「こんな装置を待っていた」という声が寄せられた。装置メーカーへの歩みが始まった瞬間でもある。
「効率化だけが目的ではありません。大切なのは、人が安心して作業できる環境を整えることです」齋藤氏は語る。
次なる挑戦 ― 環境負荷への取り組み
メタルエステの開発は、危険な作業を減らすことに成功した。しかし、そこで終わらせないのがエステーリンクの姿勢である。現場を見渡せば、溶接のヒュームや油煙など、目に見えにくい環境リスクは依然として残っている。
「今はまだ大きな問題として認識されていないかもしれない。けれど30年後には健康被害となって表れる可能性がある」。齋藤氏はそう語り、経営者としての責任を強調する。
その思いから生まれたのが、現在開発・販売を始めたばかりの作業現場の集塵装置だ。展示会ではスモークで充満させた部屋を20秒で澄み切らせるデモを実施し、その性能を示した。これは「働く人の未来を守る」ことを体現する取り組みから生まれた製品であり、職場の環境問題に対する新たな答えでもある。
人を大切にするものづくりへ
メタルエステも集塵装置も、その根底には「人を大切にするものづくり」という理念がある。危険作業から人を守り、将来の健康リスクから人を守る。
どちらも「目の前の利益よりも、人をどう守るか」という姿勢から始まっている。
「人が心身共に安全で安心できる環境を整えること。それが経営者の使命であり、会社の基盤を強くし、ものづくりの価値を高めるのです」と齋藤氏は語る。
理念を【金太郎あめ】のように
その真摯な理念と行動を如何にして、経営者と社員が共有できるかによって会社の方向もきまるのではないかというという問いに、齋藤社長は、社員育成について「理念を金太郎あめのように揃えたい」と表現する。
外から切っても中から切っても、常に同じ模様が現れる金太郎あめのように、社員一人ひとりが共通の理念を体現する組織を目指しているのだ。
「理念は言葉として覚えるだけでは意味がない。日常の行動や判断にまで落とし込み、社員一人ひとりが同じ芯を持って動けるようにしたい」と社長は強調する。
そのための具体的な取り組みの一つとして、同社は 新入社員とのノート交換会 を続けている。新入社員が日々の気づきを書き、直属の上司と社長がコメントを重ね、一冊が埋まるまで続ける取り組みだ。この過程を通じて、社員の思考の変化や責任感の芽生えを見極めることができる。
「ある瞬間、社員の目が変わるときがある。責任を与えられ、自分の役割を自覚したとき、人は大きく成長する」と、その時の社員の様子を思い出しながら語った。
小さな行動に理念を宿す
理念を浸透させるには、日常の小さな行動が重要である。エステーリンクが掲げる 基準行動 は、あいさつ、段取り、家族を大切にすること、チームワークを乱さないこと――どれも当たり前のように見えるが、実践の積み重ねこそが組織を形づくる。
「職場だけでなく家庭や普段の行動にまで結びつけられるかどうかが本当の差になる」と社長は言う。工場見学で外部からの訪れる方々から高評価を受ける一方で、目指すべき形までは「まだ50点」と厳しい自己評価を下すのもそのためだ。
人を育てるものづくり
理念を金太郎あめのように揃える取り組みは、決して単なる組織統制のためではない。社員一人ひとりが「人を大切にするものづくり」を体現できるようになれば、顧客や社会に提供する価値そのものが揃っていく。
「社員と話していると、その受け応えのなかに“芯”を感じさせる人が増えてきた。まだまだ、これからも会社はもっと強くなる」。齋藤氏はそう語り、理念の浸透を人材育成の核心に据えている。
危険作業から人を守る技術、未来を見据えた環境装置――そして人を中心に据えた経営姿勢。どれもが「人を大切にする」という信念から生まれてきた。そして今、その信念は理念の共有へと深化し、エステーリンクの歩みを導いている。その延長線上にある「人を中心に捉え、育てるものづくり」は、地場産業の枠を越え、日本の製造業そのものの未来を切り拓く力となる。
エステーリンクが示す道は明快だ。人を育てることこそが、ものづくりの未来をつくるのである。
(聞き手:株式会社つばめいと齋藤優介、渡辺丈一郎)
