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齋藤優介 齋藤優介
2025.09.30

有限会社 スワオメッキ

ご縁を磨き、未来を鍍金する ― スワオメッキの挑戦

代表取締役 鈴木康仁 氏 インタビュー

燕三条の地場産業において、金属表面処理を担うスワオメッキは、単なる「メッキ屋」にとどまらない存在感を放っている。スワオメッキ代表取締役 鈴木康仁氏の言葉には一貫して、技術と人とのつながりを等しく大切にする経営哲学が表れている。

縁から始まった創業と仕事の広がり
同社の創業は、地元の老舗器物メーカーの三宝産業の「こんなメッキ屋があるといいな」という一言から始まった。時はバブル経済の絶頂期、最初の仕事は宴会食器への銀メッキであり、その縁は今も取引として続いている。
やがて弥彦神社の参拝用装飾の金メッキなど神社仏閣の仕事に広がり、全国の神輿の装飾なども手掛けるようになった。
最終工程を担うメッキは、製品を仕上げるだけでなく、依頼元の思いを引き継ぎ、使う人の手に渡るまでを姿を想像して行うべき仕事だと鈴木氏は語る。その思想は「縁をつなぐ」という同社の姿勢そのものを表している。

青年部で培った価値観の変化
鈴木氏の経営観を大きく変えたのは、燕商工会議所青年部での出会いであった。ファクタリウム参加企業でもある阿部工業の阿部社長や、エステーリンクの齋藤社長をはじめとする先輩経営者との交流を通じ、損得勘定を超えて人と真摯に向き合うことの大切さ、そして経営者として自らをどう表現すべきかを学んだという。
「人や仕事に本気で向き合うことで気づきが生まれる。目を背ければ、人のせいにするだけになる。」
その言葉には、経営者としての覚悟がにじむ。さらに阿部社長からは「普段の人柄や、楽しんでいる姿を隠さずに出した方がいい」と助言を受け、鈴木氏は自らの素直な姿を社内外で示すようになった。結果として、その率直さが信頼を呼び込み、仕事をしやすい環境づくりへとつながっていったのである。

こうした青年部での経験は、鈴木氏にとって自らの“ものさし”を変えるきっかけとなり、やがて後輩世代に対しても学びや挑戦の機会を与える姿勢へと結実した。単なる交流を超えて、人間関係を通じて経営者としての在り方を磨く場となったのである。

FACTARIUMを通じた広がり
また「FACTARIUM」の活動は、スワオメッキの挑戦を力強く後押ししている。これまでBtoB企業にとって、自社の在り方や経営理念を伝える機会は、主に展示会の場に限られてきた。しかしFACTARIUMでは、参加企業の経営者が自らの言葉で理念や思いを語り、その姿を動画として広く公開している。こうした取り組みは、単なる製品紹介を超え、経営者の人柄や会社の背景までも伝える新たな広報手段となっている。
鈴木社長も、自身の考えや価値観を語る動画を通じて多くの企業に存在を知ってもらうことができた。その結果、「動画を見て依頼を決めた」という新しい取引の事例も少なくなく、FACTARIUMの波及効果は確実に広がっている。BtoBの世界において“理念を共有すること”が仕事のきっかけになることを実証している点で、この活動は大きな意義を持つといえるだろう。

感謝と信頼を基盤にした経営
鈴木氏が重視するのは、社員や取引先への「感謝の循環」である。社員の小さな不平不満も吸い上げ、課題として共有し改善につなげる。人事評価も「仕事の速さ」から「人として当たり前のことができるか」に改め、感謝し合える組織文化を形成しようとしている。右腕となる社員との日々の対話や、DXによる社内共有システムづくりもその一環である。これらの変化を通じて、同社は単なる作業集団から「文化を築く組織」へと変わろうとしている。

神社仏閣と産業への眼差し
近年、鈴木氏は弥彦神社をはじめ各地の神社仏閣を訪ね歩いている。祈りや修繕の仕事を通じ、日本人が受け継いできた信仰心や地域文化の持続に関わりたいと願うからだ。「祈りの場を巡ることで、その土地の暮らしや生き方を引き出し、残すことが大切だ」と語る姿は、産業遺産や地域文化を未来へつなぐ姿勢と重なり、燕三条の産業史とも共鳴している。

未来に向けた挑戦
スワオメッキは今後、国内にとどまらず海外の神社仏閣の修復にも挑戦する考えを持つ。台湾やタイとの連携を視野に入れ、新たなイノベーションの芽を育てようとしている。もともと地場の金属製洋食器やハウスウェアから始まったメッキの仕事は、いまや多くの祈りを受け止める場を彩る技術へと姿を変えつつある。
「ただのメッキ屋ではなく、多くの人の縁をつなぎ、感謝を広げる会社でありたい」。鈴木氏の言葉には、地域産業の未来を鍍金するような確かな光が宿っていた。

(聞き手:株式会社つばめいと齋藤優介、渡辺丈一郎)