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齋藤優介 齋藤優介
2025.09.30

有限会社 本間産業

洗浄とは、未来の信頼を設計すること 〜本間産業が挑む「見える品質」と「分析ソリューション」という新たな武器〜

  代表取締役 本間尚貴 氏インタビュー

金属加工においてプレスや切削の摩擦熱を緩和させる際の“加工油”を取り除く必須の工程、それが「脱脂洗浄」である。
だが今、脱脂洗浄は単なる「油分を取って綺麗にする」工程だけではなく
「いかに油分が限りなく除去されていることを証明する」ことへと進化しつつあるという。
どういうことか。有限会社本間産業 代表取締役 本間尚貴氏に聞いた。

「いま求められているのは、“洗ったか”じゃなく、“洗えていることを証明できるか”なんです。だから私たちは、洗浄のその先にある「分析」を、事業として展開しようとしています」

脱脂という「見えない工程」が、すべてを左右する
自動車、医療機器、電子部品、航空―
高精度を要求されるこれらの産業において、金属表面に残る油分や微粒子は、不良・事故の温床となる。
「例えば脱脂が不十分だと、溶接が弾かれたり、塗装が剥がれたりする。
“表面に極力油分がない”という状態をどうやって保証するか。そこが企業としての信頼力になります」
だからこそ本間産業は、ただ洗うのではなく、“測定と分析で品質を証明する仕組み”を新たにビジネス展開させる考えだ。

洗浄から分析へ  “証明する力”が事業になる
「私たちの武器は、“洗えること”だけじゃありません。
洗った後に、どう分析し、エビデンスとして油分が極力無いと証明し提出するか。その部分が、いま最も価値になってきています」

本間産業では、表面残渣や、残留油分の検査、洗浄前後比較などを社内で対応できる体制を構築してきた。
しかし、ある時、その自社のエビデンスを取るために用いてきた【分析】の依頼が来た。

「初めて【分析】だけの依頼が来た時にはびっくりしました。洗浄の仕事でなく分析だけして欲しいという内容は。もしかして、これは新たなビジネスになるのではないかと考えました。」

そこからの動きは早かった。今、洗浄と切り離して、分析業務を独立したソリューション事業として外販を進めている。
他社製品の洗浄状態の第三者分析、新製品開発における洗浄性評価、工程内クレームの原因分析など、燕という地場にいながら、全国の製造業の「品質保証の相談窓口」になる試みである。今まで地場で培ってきた洗浄のノウハウが新たなシーンに移行してきた。

可視化は信頼戦略である
本間産業の展示会ブースには、製品ではなく、測定機器・洗浄レポート・工程フローが並ぶ。それは「何を洗ったか」を強調することでなく、「どのように証明するか」が問われる時代を象徴する光景だ。

「『この会社、ちゃんと見てるな』『信用できそうだな』って思ってもらえるかどうか。

それを左右するのが、【分析】と【見える化】の精度なんです」
洗浄の工程プロセスそのものを「信頼」として見せる。それが同社の戦略であり、挑戦でもある

燕から全国へ。品質保証の“第二拠点”として
本間産業の顧客は、いまや新潟県内にとどまらない。
九州や関西方面など、遠方の依頼も増えている。

「各地の地元産業の中で協力会社が減っていくなかで、“そういえば本間産業があったな”と、全国のどこかで思い出してもらえたら嬉しいですね」と本間社長は和かに話す。

また、災害時のBCP対策として、燕にバックアップの拠点を設ける提案も進めている。近年の自然災害が絶えない状況において、何かあった時に、一度でも関係をもっていれば、即座に対応できるということも強調していた。

「困った時にこそ役に立ちたい」という本間社長の言葉が心に響く。
製造業の命綱である“洗浄と分析”が、地方から各地の産業インフラを支える時代が始まっているという感銘を受けた。

「洗う」から「証明する」へ
本間産業が提案する“安心”という無形資産。

「私たちは洗浄業じゃない。“安心提供業”なんです。分析という新たな柱で、“見えない品質”を見える価値に変えていきたい」
金属の表面をきれいにするだけではない。
ものづくりの信頼性を、数字とプロセスで“証明する”ことが、いま求められているのだ。

金属を洗う。一見、目立たない工程。だが、その“見えない工程”にどこまでこだわるかに製造業の本質が見える。
「きれいにする」のではなく、「信頼を証明する」。
「汚れを落とす」のではなく、「未来の品質を支える」。

洗浄という名の工程に、これほど強い哲学と誇りを込めている企業があることに、深い感動と敬意を覚える。
本間社長の言葉の一つひとつには、ものづくりへの真摯なまなざしと、社会を支える覚悟が込められていた。そして環境負荷に対しても徹底した管理の姿勢も垣間見える。
洗浄の工程から製造業全体を支えるというその想いは、まさに縁の下の力持ちを極める覚悟であり、そして、次の時代へと受け継がれるべき“志”にほかならない。
だからこそ、可視化と分析に挑む本間産業の姿勢は、洗浄という技術の枠を超え、日本の製造業に「新たな標準」を提示していると心から思った。

(聞き手:株式会社つばめいと齋藤優介、渡辺丈一郎)