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齋藤優介 齋藤優介
2025.09.30

有限会社 フナックス

技術屋の本能を貫く

代表取締役  船山智裕 氏 インタビュー

現場に金属を削る音が響いている。その中心に立つのが、有限会社フナックスの代表取締役 船山智裕氏だ。自動車産業の変動、価格競争の激化。外部環境がどれほど厳しくとも、「金型の設計から製作まで、トータルに応える」という姿勢を崩さず、技術屋としての本能を頼りに前進してきた。「難しい仕事ほど燃える」。その言葉は、フナックスの歩みを象徴している。

技術屋の本能
船山氏は「作り手の本能」として三つの感覚を挙げる。
第一に、目の前の金型の数値と構造に挑む緊張感。
第二に、未知の部品をかたちに変える創造力。
そして第三に、設計者の思想を読み取り、最適解を形にする探究心だ。
「金型屋の面白さは、毎日違うものが作れること。繰り返しの単純作業ではなく、常に新しい課題と向き合う。その積み重ねがノウハウとなり、会社の力になる」と語る。
実際、フナックスには300パーツを超える大物金型や、複雑な三次元形状の案件が持ち込まれることもある。図面だけでは完成形が見えないことも少なくない。「きちゃったー」と思うと同時に、それでも「どう作るか」を考え抜き、最適な構造を編み出す。そこに技術者達の血が騒ぐ。

品質と量産を止めない使命
フナックスの哲学を語るうえで欠かせないのが「量産を止めない」という信念である。良い金型とは20年、30年と使い続けてもトラブルが起きないものであり、そのために徹底した品質管理が求められる。
「お客様の生産ラインを止めてはいけない。その一点に尽きます。だからトラブルが起きても必ず次に活かす。改善と分析の繰り返しこそが品質管理の核心です」と船山氏は語る。
微細な「バリ」を抑えるため、100分の1ミリ単位でクリアランスを調整する。常温から200度に至る成形環境を想定し、金属の膨張率を読み切った設計を行う。エンプラ(エンジニアリングプラスチック)やガラス繊維入り素材など、難易度の高い案件でも妥協を許さない。まさに「溶かして固めるだけ」と言いつつ、その奥に積み重なる試行錯誤こそがフナックスの力だ。

幅広い対応力
フナックスの対応領域は幅広い。プラスチック金型やダイカスト金型はもちろん、日用雑貨、自動車部品、機械部品まで設計から製作・量産まで一貫対応。さらにガンドリル加工やグラファイト電極加工など、周辺工程も自社で担う。
近年は成形機とロボットを導入し、試作から小ロットの量産まで自動生産が可能となった。「お客様のニーズに応えるための投資は惜しまない。多くても1000個規模、できるだけ短期間で納品するなど柔軟に対応できることが強みです」と船山氏は胸を張る。

人づくりとチームの力
フナックスのもう一つの強みは人材育成にある。船山氏は「同じことを繰り返すのが嫌な人こそ金型屋に向いている」と言う。毎日違うものを作り、設計者や技術者がチームとなって挑戦を重ねる。そのプロセスを通じて、会社としてのデータとノウハウが蓄積されていく。
「最後の微調整は必ず人の目と手で行います。図面に書かれていない“塩ひとつまみ”をどう加えるか。そこが金型屋の面白さです」と語る言葉には、職人の誇りがにじむ。
少数精鋭主義を掲げる同社は、一能工として任せられる職人もいれば、積極的に新しい挑戦を望む社員もいる。適材適所を徹底することで、少人数ながらも高い成果を出し続けている。

金型業界の未来と展望
自動車産業の変化は金型業界全体を揺さぶっている。最新のEVでは金型の数が減少し、共通部品化も進む。「業界の未来は決して明るいとは言えない」と船山氏は率直に語る。しかし同時に、「だからこそ私たちは深く、広く応えられる体制を築く。設計から量産までトータルに応えられる金型屋として進化し続けたい」と力を込める。
その言葉の根底には、「作り手の本能」がある。難題に挑み、未知のものをかたちに変え、量産を止めない金型を提供する。その積み重ねこそがフナックスの存在理由であり、船山氏の信念である。

フナックスの歩みは決して穏やかではなかった。数多の困難に直面しながらも、日々の試行錯誤と改善の積み重ねが「トラブルなき金型」を生み出し、産業界を支えてきた。その根底には「技術屋の本懐」とも言うべき揺るぎない信念がある。困難を糧に思考を巡らせ、最適解を導き出す姿勢は、自動車産業の変化や国際競争の激化という逆風のなかでも変わることがなかった。船山智裕氏は技術者としての本能を信じ、進化を続けている。燕三条から発信されるフナックスの挑戦は、これからも日本のものづくりを支える確かな礎となる。

 

(聞き手:株式会社つばめいと齋藤優介、渡辺丈一郎)